鶴の湯だよりNO234 2009年12月12日配信より

鶴之助独り言(不毛地帯)

テレビはあまり見ない方だが、木曜10時からTVドラマ「不毛地帯」は毎週欠かさず 視聴している。
戦後の復興期、総合商社間の熾烈なビジネス戦争を、それぞれの人物にスポットを当てながら画かれた骨太ドラマである。

主演は「白い巨搭」と同じ唐沢寿明さん。原作も山崎豊子さん。
シリアス系のドラマだが、最近のありえないフアフアした軽薄な設定と会話のドラマよりずっと新鮮で惹きこまれるものがある。

唐沢演じる主人公壱岐正は、元伊藤忠商事会長「瀬島龍三氏」がそのモデルといわれる。

元大本営作戦参謀だった主人公が満州でソ連軍の捕虜となりシベリアで抑留、11年間 強制労働を強いられる。
(途中極東軍事裁判で天皇の戦争責任の証言を条件に帰国をソ連から持ちかけられるが、 これを断り日ソ平和条約の締結後まで帰国ができなかった)
このシベリア抑留経験が主人公の人生の暗いバックボーンとなって常に影を落としているという設定。

主人公は帰国後、2年間の浪人期間を経て、民間の総合商社へ就職、当初は戸惑いながらも元大本営作戦参謀の頭脳と人脈を生か して防衛庁への戦闘機の売りこみや自動車産業におけるアメリカと日本の企業提携、中東での石油開発を手掛け、専務へと昇進していく。
これらの模様をライバル商社との競争や社内の上司との確執を絡めながらみせてくれる。

主人公が大本営幹部の元軍人で戦争責任や多くの部下の死を背負い、影を感じさせる演技が ドラマに重厚さと深みを増している。

子供時代の錯覚かも知れないが、大人が大人らしく、エリートがエリートらしく美しく、頼りに思えた昭和を思い出させる秀逸なドラマである。

うちの亡くなった祖父も元陸軍(関東軍)軍人だったが、寡黙な実践家で同じような雰囲気を持っていた。
ドラマのエンディングもなかなか味があって斬新。

とにかく一昔前の一本筋の通った日本のいい男がこのドラマで観れるのがいい。