【鶴の湯だより 2004.2.5配信 NO81より】
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鶴之助独り言(鶴の湯ヒストリー)
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現在の鶴の湯の地に銭湯が開業されたのが昭和3年のこと。
この時の屋号が「鶴養湯」(カクヨウユ)。もちろん開業時の経営者は当家ではありませんでした。

その後、間に一代違う人の代を経て、昭和29年、丹波で材木商をしていた祖父が買収、そのまま屋号も「鶴養湯」として営業を始めました。
今年で当代の銭湯50周年になるんですね。(鶴之助で3代目、半世紀の歴史)

当時の建物は、大正モダニズムの影響を受けてか外観はコンクリート造りの洋館風。
現在の伏見の宝湯さんの外観に少し似ていました。

浴室の水槽で金魚を飼っていたのと外観が金魚鉢の形に似ていたので通称「金魚湯」といわれていたそうです。
後年は川沿いにあったので「土手湯」とも呼ばれてました。
多分、鶴養湯という名前が覚えにくかったせいでそんな通称で呼ばれていたんでしょう。

買収費用は当時のお金で500万。大卒の初任給がおよそ1万円位でしたので、そこから換算すると、現在の貨幣価値でおよそ20倍の1億円位でしょうか。
この時代は、土地や建物より、風呂屋の営業権利の対価が高かったみたいです。
1日の売上がいくら上がるかで、銭湯の相場が決まりました。

でも、40代だった祖父がキャシュでポンと買ったそうですので、いやーうちの爺さんはなかなか甲斐性者。戦争へ12年もいって、戦後、裸一貫からスタートしてですから我が祖父ながら感心してしまいます。

昭和29年の風呂銭は大人が12円。当初から1日300人〜400人の入浴客があったそうです。
でも伏見の街中の銭湯は軽く1000人を越していたところもあったらしいです。
(ス−パー銭湯並の客が小さな街銭に集まるのですから、そら凄かったんでしょう)

当時の営業時間は、朝11時から夜の11時まで。
燃料確保の為、その時はまだ紅顔の美青年だった(自称)つる爺は毎朝5時から高雄の製材所まで3輪トラックで走って、杉皮や木屑を集めて廻ったとのことです。

従業員さんもいて、脱衣場で子供に服を着せたり、赤ちゃんのお守りをする女性のお手伝いさんが2人、ボイラー番の男性が1人住込みで働いていました。
ドラマ「時間ですよ」みたいな感じだったのでしょうか。当然、鶴之助はまだ生まれていませんでしたので、この頃の記憶は全くありません。

その後、田んぼだった当湯の周りにもポツポツと新興住宅が建ち始め、入浴客も飛躍的に増えました。
ピークは昭和40年初頭で、700人/日。銭湯の黄金時代を迎えます。

でもこの頃を境に、家風呂の普及がすすみ、銭湯離れがドンドン加速することに。

昭和48年オイルショックを契機に営業時間が短縮され(開店夕方4時〜)風呂代も一気に高騰、昭和50年には大人料金が100円台に突入してしまいます。
これが更に銭湯離れに拍車をかけることに,,

重油で焚いていたボイラーもこの時、木に逆戻り。
土地柄で伏見の清酒の一升瓶を入れる木箱の廃材を引きとって燃料にしていました。

ジェット噴流やネオン、サウナなどあの手この手の改造が流行るのもこの頃。
でもお客の減少に歯止めをかける決め手にはなりませんでした。

平成9年、これではいけないと一念発起して全面改装、ロビーフロント形式の2階建て
屋号も覚えやすいようにこの時「鶴の湯」と改めました。

余談ながら、京都の銭湯は、間に<の>字の入る屋号はホントに少ない。
大体は「桜湯」「寿湯」「菊湯」とか古い銭湯にはまず<の>字が入りません。
でも東京の銭湯には「松の湯」「亀の湯」とか<の>が入る屋号が多いのは面白いところです。
「鶴の湯」と<の>が入る方が「鶴湯」というより、響きにやさしさと親しみがでるような気がして<の>を入れる事にしたんです。

新装の甲斐あって、客数は約3倍に増えましたが、これも最初の3年間。
3年前から、伏見に立続けに3軒、スーパー銭湯がオープンして大打撃、ジリ貧状態に。
鶴之助も2年前、20年間のサラリーマン生活に終止符を打ち鶴の湯の三代目を襲名。
助っ人効果もさほどなく、現在も厳し〜い経営が続いてます。

でもどっこい街の銭湯には、スーパー銭湯にないというのがあります。
日本の長年の生活習慣として培われた外湯の文化、絶やすわけには参りません。

少しずつでも皆さんに喜んでいただけるような銭湯を目指して、これからも鶴の湯は進歩していきます。どうぞ皆さん街銭を見捨てないで下さいネ。

最後に鶴之助銭湯応援標語をひとつ..

「気軽にぶらりと出かければ、そこには人の温もりがある。街のほっとステーション、さあ、近くの銭湯へいこう!」
ちょっと空しいかな、この標語。(^o^)/


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